CampanilismO

語彙力の足りない人間が観劇する日々

SOMLインタビュー訳


最近時間を持て余しているので、勉強ついでにいろいろ動画に字幕つけたり手元のプログラムや雑誌のインタビューを訳してるんですが(辞書を使い時間をかけないとまだまだ長文は読めないので…)
その中で今回のSOMLの公演前に発売されたThe MUSICAL2019年12月号のインタビュー記事がいろいろ興味深く面白かったので興味がある人がいたら読んでほしいなと思いまとめてみました。


私は雑誌を買ったんですが、記事自体は以下のページにもありますので原文興味ある方はどうぞ。
https://www.themusical.co.kr/Magazine/Detail?num=4388


※勉強ついでなので直訳気味で読みにくい部分も多いかと思います。

 

 

 

 

 

 

<ストーリー・オブ・マイライフ>
10th anniversary
世界を変える1つの小さな羽ばたき

この10年間ミュージカルを熱心に愛した人ならば恐らく毎年12月雪が降る日のたびに自然とこの作品を思い浮かべるだろう。2010年に初めて観客と出会い、小さな羽ばたきで観客の心に大きな影響を与えた「ストーリー・オブ・マイライフ」だ。
10周年を記念して今までこの公演の歴史を共に作ってきた9名の俳優たちが一堂に会した。


■10周年チームの心強い支え
イ・ソクジュン×コ・ヨンビン×カン・ピルソク

 

今シーズン出演を決めるのに10周年ということは大きな影響でしたでしょうか?

(イ・ソクジュン)私の場合は確かにそうでしたね。私がミュージカルをやらなくなって少し経ち、私にとって意味のある作品だけやろうと思っていたんですが、10周年を迎えたというのはその意味が大きすぎてやらないわけにはいきませんでした。
さらに「ストライブ」(「ストーリー・オブ・マイライフ」のこと。以下「ストーリー」)は初演の時、演出家が俳優たちの話をたくさん聴いて下さったのでより愛着が大きいです。ドラマの台詞のようにすべて一緒に“一針一針”作るので、差し出がましいですが僕の作品だと言える数少ない作品です。劇中でトーマスとアルヴィンが紙を投げる場面も、オリジナルプロダクションの公演にないものを我々が作ったんですよ。初演の初日をいまだに覚えているんですが、率直に言って公演前には観客の反応はどうか想像がつかなかったんです。当時華やかなミュージカルが段々多くなっている時期で、アナログ的な作品はうまくいかなかったんです。でも公演が終わってからはこの作品はそんな流行を超えたような気がします。

(コ・ヨンビン)私は再演の時にこの作品に初めて参加したので、アメリカで1年を休んできた状況だったんです。稽古場で私自身を始めとするすべての「ストーリー」チームの人たちに完成度の高いランスルーを見せたことがなくて、初公演の時は不安になりながら舞台に立ったことを覚えてます。ですが本当に幸いにも観客の方々が私のトーマスに良い部分を見つけてくださったので、その次のシーズンと次の次のシーズンにもずっと参加できました。実は私の3回目のシーズンの時、この作品を卒業することになると思ったんです。ですがこうして10周年公演まで共にすることができてとても感謝しています。

 (カン・ピルソク)私は兄さんお二人に比べて遅い3回目のシーズンの「ストーリー」に出会ったんですが、それでもこの5年間3回の冬をこの作品と共にしたので私にも特別な意味があります。そしてソクジュン兄さんがやるというので悩む必要がなかったんです。兄さんはこの作品でアルヴィンがどうしなくてはいけないのかとてもよく知っていて、一緒に呼吸を合わせることが本当に面白いんです。トーマスとして何かたくさんしようとしないでも公演がおのずと自然に流れていくんです。「ストーリー」はトーマス視点で物語が構成されていますが、その物語の中にトーマスを導いていくものはアルヴィンじゃないですか。ソクジュン兄さんと今シーズン登壇する時期が少し違うので一緒に舞台に立つことができないのが残念です。

 

 


お三方皆さん一緒に参加された3回目のシーズンの記憶に残っているエピソードはあるでしょうか?

(カン・ピルソク)私は実は「ストーリー」に出演できないところでした。その時期に出演することになっていた作品があったんです。ところがその作品がひっくり返ったので、その日すぐにシン(チュンス)代表*1に電話をしたところ「あ…そう?でも私たちもだめかもしれないけど?」そうおっしゃってましたよ(一同笑)作品が良いというのはよく聞いて知っていたんですが、私には物語の構造が少し慣れない気持ちがして、稽古しながらとても疲れました。一般的に起承転結の構造ではないため、どう演技をしたらいいのかわからなかったんです。そうしたら稽古場でソクジュン兄さんとヨンビン兄さんが練習しているのを見て霧が晴れるような気持ちになったんですよ。

 (イ・ソクジュン)その時うちのチームではピルソクは練習が遅いことで有名だったんですがね。のろのろして悩む姿を見るのは本当に好きでした。公演が3回目のシーズンまで来て、ある程度形が決まったので、練習するとき何の疑いもなく既存のものをやる傾向があるんです。ですが、見知らぬ悩む青年が入ってきたので練習が新しい質問になるんですよ。私は俳優がキャラクターの行動ひとつひとつについて理由を自ら探そうとすればその悩みの重さは必ず舞台でも現れると信じています。またそのような作業を経なければ作品がうまく流れないんです。なので私もピルソクと公演をすることは好きなんですが、問題は私がピルソクよりも大きいじゃないですか?この子と公演をしたら体格が小さく見えるようにしようとすごく苦労しました。特に子どもの頃の演技をするときは肩をすくめてほとんど膝で歩き回りました。

 (カン・ピルソク)兄さん、私たちはそれほど差はないですよ。誇張してひどいな(一同笑)

 (コ・ヨンビン)私もピルソクが稽古場でとてもたくさん悩んでいたことを思い出すんですが、その状況で先輩として助けることができない自分自身がじれったく、やるせなかったです。私にとって「ストーリー」は私の考えとあまりに似ていて本能的に理解ができた作品なんです。稽古場で誰かが「ここでどうしてこうやるの?」と問題提起をしたら、心では答えをわかっていても、言葉では説明できなかったんです。他の第3シーズンの記憶であれば、ミスをしたことだけが思い浮かびます。(笑)それからソクジュン兄さんとの最後の公演の時、とても泣いた事も忘れられません。

 

 

 

「ストーリー」はこの作品を大事にするファンが多いので、記憶に残る観客の話もありそうですね。

 (イ・ソクジュン)いつだか一度ものすごく厚い手紙をもらったことがあります。手紙をこんなにかけるなんて驚いたんですが、その方は何年間もずっとうつ病に苦しめられたので今日死ぬか、明日死ぬか、それだけ考えて生きてきたんです。しかし何かに魅せられたように偶然「ストーリー」を見てから、また生きてみたいという力を得たそうです。ある意味、私はこの作品に込められた内容を伝えただけなんですが、その時間を共にした人たちの人生に影響を与すことになると考えるようになったので、次の日の公演から責任感がはるかにもっと大きくなりました。そして「ストーリー」は公演をするたびに観客の方々に結末の後にどうなったと思うかという質問を特によく受けます。観客の方々がエンディング後の物語を気にするというのは、この人物たちの物語をもっと聞きたくて、この作品が終わることが残念だということなんですよね。「ストーリー」が10周年まで来ることができたのは結局観客の方々の力だったと思います。

 (カン・ピルソク)私が覚えていることは一人の観客の方が「ストーリー」を見て、子どもの頃親しかった友人に会いにアメリカへ行ってきたということです。互いに遠く離れて暮らしながら、ずっと「私たち会わなければならないのに」というだけ言っていたら、公演を見て今できなければもう一度会う機会がないかもしれないという気になったそうです。その他にも「ストーリー」をみたら喧嘩した友人と仲直りできたという手紙と似たようなことを多く受け取りましたが、公演を通して誰かにこういう直接影響を与えることは本当に気持ちがいいことですね。

 (コ・ヨンビン)私も似たような経験がたくさんあります。「ストーリー」を公演するときはいつも観客の方々につらい時期を乗り越えることができたという手紙をたくさんいただくんです。その中で一番記憶に残っていることは実際私たちの作品のような友人を先に天国に送った方が送ってくれた手紙です。どうしようもなく離れなければならなかった友人が非常に恋しかったのですが、公演を見たらとても慰めになったというお話でした。「ストーリー」の時にもらう手紙はファンレターというよりも感謝の手紙に近いので、熱い手紙を読んでいると、私もまた感謝し、力をもらうときが多いです。「ストーリー」はほんとうに観客と俳優がお互い癒される作品だと思います。

 

 


これは少し違う話なんですが、もしかしてトーマスとアルヴィンのように特別なクリスマスの思い出がありますか?

 (イ・ソクジュン)小さい頃私たちの家は生活が苦しかったので大家さんに隣り合っている貸間に住んでいたことがあります。6歳の時でした。クリスマスの日、大家さんの前に炭眉の雪だるまがちょうどいたんですが、すごく羨ましいんです。その当時、雪だるまの眉を炭でつくるのが基本だったんですよ。ところが私たちの家には炭がないので、私がそれを羨ましくなったので、兄が二倍のサイズの雪だるまを作って、コンジャバン(黒豆の煮物)で眉を作っておいたんです。当然、兄に怒りましたよ。コンジャバン雪だるまはありえないって(一同笑)

 (コ・ヨンビン)私はクリスマスにまつわる記憶はほとんどないです。家の中の雰囲気があまりに簡便で静かに静かにしていたので、記念日というものがどういうものなのか知らずに生きていたんです。子どもの頃クリスマスツリーを一度も作ってみたことがないと思います。(イ・ソクジュン:ヨンビンはきれい好きな子だから騒がしかったり複雑なことは嫌いなんです。家でツリーを作るなんてしたら、無理に作ったとしてもたぶん片づけるときに苦労すると思いますよ。)あ!「ストーリー」をするとき、雪が降った時に雪の上に横になって「雪の中の天使」を作ったことがあります。本当に天使の形に作れるのかどうか気になったので、人が誰もいないときに家の前の街頭の下で一人で静かにしてみました(笑)たぶん「ストーリー」をした俳優ならば雪が降った日にきっと一度はしてみてると思います。

 (カン・ピルソク)私はすごく寒そうなのでしたことないですが、今度はきっとしてみようと思います(笑)私は一年中でクリスマスのシーズンが一番好きだと思います。クリスマスが来たらただ気分が良くなります。子どもの頃は聖堂を一生懸命通ったのでクリスマスシーズンには毎日聖堂に行き何かしていた記憶がありますね。そういう思い出のためか12月になると気分が良くなって、他の人たちもなんだか気分がよさそうに思います。

 

 


今回の10周年公演を控え、感想はいかがですか。

 (イ・ソクジュン)私は三回目のシーズンが私にも本当に最後の「ストーリー」だと思っていました。なので先ほどヨンビンが言ったように千秋楽の日すごくたくさん泣いたんです。ある日公演をしようと鏡を見たら、もうこれ以上この公演をできないと思ったんですよ。鏡の中のあの人が幼い役をするのを私も見たくはない気持ち?なので今回では鏡を見ないつもりです(一同笑)率直に言って観客の方々が頭の中に持ってくれている記憶と違うんじゃないかと思い、怖いですが、自分自身に催眠をかけて無事に上手く終えられたらいいなと思います。

 (コ・ヨンビン)私もソクジュン兄さんと同じ気持ちです。私たちの以前の公演を見てくださった観客の方々が覚えている姿と今回の公演で会うことになる私たちの現実は違うんじゃないかと怖いです。でも「ストーリー」の場合には俳優個人個人ではなく公演全体を見ることになる作品だと言えると思います。俳優が華やかな歌唱力を見せてくれる作品とも違い、さらには華やかな演技力を見せてくれる作品でもありません。この作品に盛り込まれたすべての要素を自然に舞台にしっかりと放つとき、客席のすべての観客たちそれぞれが何かを感じる作品なので、勇気を出してやり遂げようという気持ちです。

 (カン・ピルソク)すべての公演はいろいろなシーズンを重ねるうちに俳優とスタッフによって少しずつ変わっていくと思います。それは公演の長所でもあるし、短所でもあるんですが。他はわかりませんが、この作品が表現しなければならない本質を逃し、華やかになることだけは警戒しなければなりません。今回には初期にこの作品を作り上げた先輩方がいらっしゃったので、新旧の俳優たちが出会い、良い相互効果を生み出せたらいいなと思います。

 (イ・ソクジュン)でもお前は「新」と「旧」の間だから羨ましい!(一同笑)

 

 

 


■互いのぬくもりを頼り
キム・ダヒョン×ソン・ウォングン×チョン・ドンファ

 

お三方は2回以上「ストーリー」に出演されているじゃないですか。作品にずっと出る理由は何ですか?

 (キム・ダヒョン)前回シーズンに公演するたびに「どうしてこんなに良い作品を早くしなかったんだろう?」と思っていました。公演が終わった後にも冬が来たらアルヴィンとトーマスが白い雪の上でごろごろしていた姿が自然に思い浮かぶんです。何度も思い出し、胸がじんとする作品をしない理由はないですよ。

 (ソン・ウォングン)実際「ストーリー」は稽古の時本当に大変でした。ひとつの物語を始めたら締めくくらなくてはいけないのに、この作品はずっと違う話が始まってしまうので、慣れるのは簡単ではなかったんです。ところが舞台に上がるや否や作品が与えてくれる胸にじんと来るものがありました。また、舞台に立つたびに観客の感情や反応をそのまま感じることができました。この幸福感がすごく大きくて、もう一度参加することにしました。

 (チョン・ドンファ)観客に愛された作品は本当に良い作品じゃないですか?私が「ストーリー」をする理由もまさにそれです。私は2011年にこの作品に初めて縁を結んだんですが、前回のシーズンに久しぶりに再び参加したのですが、やっぱりすごく幸せでした。その上、今年は10周年を迎えたので、今回の公演を共にすることができて光栄です。

 

 


「ストーリー」のファンの方たちが楽しみにしているシーンの中のひとつが雪合戦じゃないですか。今回のシーズンの舞台で勝ちたい相手はいますか?

 (キム・ダヒョン)私はソクジュン兄さんです。ですが残念ながら今回のシーズンではスケジュールの関係で一緒に舞台に立てないんです。だから最近稽古場ででも恨みを晴らそうと思ってます。必ず一度勝ってみますよ。(笑)

 (チョン・ドンファ)私が前回のシーズンの雪合戦で最下位だという話を聞きましたがそうなんですか?千秋楽の日にはグローブを準備したのでピルソク兄さんの雪をタッ!とキャッチもしたんですけど…(笑)実は私はトーマスが投げる雪は全部当たりたいんです。外に出て遊ばないといっていたトーマスがアルヴィンのために外に出てくるからです。その気持ちがとてもありがたく、切ないんです。だから私はトーマスが家の外に出てくるとすぐぱっと抱きしめます。この場面の話が出たから話すんですが、ウォングン兄さんのトーマスはこの時私を本当にしっかり支えてくれます。兄さんは本当に太平洋のような肩を持っているので、雪合戦をするときも勇敢に雪を投げることができるんですよ。(笑)

 (ソン・ウォングン)実は紙を丸めて作った雪なのでうまく投げるのは簡単じゃないんですよ。だからいつかは一度雪が当たるようにとじっと立っていたんですよ。これこそアルヴィンとトーマスらしい行動じゃないかと思って。最近には俳優たちが自身のスタイルそのまま雪合戦をするんですが、私は特に誰かに勝ちたいという気持ちよりそれぞれアルヴィンのスタイルに合わせて雪合戦をしたいです。あ、そういえば、雪合戦を終えて、「Saying Good Bye part 2」を歌うとき、すごく心臓が張り裂けそうです。(一同笑)ものすごく柔らかく歌わなければいけない歌なんですが、雪合戦が終わった直後に歌うのは簡単なことじゃないですよ。

 

 


「ストーリー」は素敵なメロディと歌詞で多くの人に愛された作品ですが、この作品で最も好きなミュージカルナンバーは何ですか?

 (キム・ダヒョン)最初は「Butterfly」が好きだったんですが、最近はアルヴィンの歌がじんと来ます。それからトーマスが歌う「Saying Goodbye」も好きです。短い小節なんですが、この歌たちがなぜこんなに身に染みるのかわかりません。特に「Saying Goodbye part1」は淡々と歌わなくてはいけないのですが、少し前の稽古中に自分でもわからない感情がぐっと込み上げてきたんです。

 (チョン・ドンファ)私は「Butterfly」を聞いているときが好きですね。ダヒョン兄さんとウォングン兄さんの「Butterfly」は本当に素晴らしいですよ。歌を聞いていたら胸になにかがふわふわと湧き上がってきます。

 (ソン・ウォングン)この作品の主題歌のような「This is it」。昨年「ストーリー」コンサートの時、本当に歌いたかったんですが、ピルソク兄さんが歌いたいと言われたので、譲歩したんです。

 (キム・ダヒョン)ウォングンはこんなに心が広いんですよ。

 (ソン・ウォングン)わあ兄さんありがとうございます。こんな言葉を聞こうと思って言ったんじゃないんですが(笑) 「This is it」は誰が歌ってもこの曲を聞くことができるということ自体がいいです。私はコンサートの時アルヴィンの「People Carry On」を歌ってみたんですが、歌詞を間違えたらだめだという気持ちで気を引き締めてましたね。ハハ。

 

 


あちこちに「涙のスイッチ」が隠されている作品じゃないですか、最も涙を我慢して大変だった場面はどこですか?

 (キム・ダヒョン)一番最後、トーマスがアルヴィンに「どうしてそうしたんだ?どうして橋から飛び降りたんだ?」という台詞を言うところです。トーマスとアルヴィンはこの質問に至るまで言いたい言葉を心に留めていたんですよね。物語の終わりになってようやくトーマスはこの質問を出すんです。この場面を演技するたびに悲しみを我慢するのが大変です。

 (ソン・ウォングン)私はアルヴィンから「君の頭の中の物語だけで何千個だよ。これがすべてだ。それが全部だ。とても美しくない?」という言葉を聞いた時です。子どもの頃本当に親しかった友人を長い時間が流れた後に再び会うと、時々一緒にいた時間の記憶が思い出せないじゃないですか。ですがこの作品は幼い頃の友情と思い出を再び思い出させ、大切にさせてくれる気がします。この台詞がその感情をこめているんですよ。

 (チョン・ドンファ)再演アンコール公演の時はダヒョン兄さんとウォングン兄さんのように後半で感動していたんですよ。ですが前回シーズンではアルヴィンの子ども時代の物語を演じているとき本当に悲しかったんですよね。今の自分は子どもがいるからか、アルヴィンにお母さんがいないと思うと胸が痛かったです。涙ポイントをまたひとつ言うなら、「Mrs.Remington」が始まるときです。私たちの作品は本当に涙ポイントが多いんです。

 

 


トーマスとアルヴィンに言いたい言葉はありますか?

 (キム・ダヒョン)私はアルヴィンにごめんという言葉を言いたいです。アルヴィンに天使クラレンスになってあげられなくて本当にごめんと。

(ソン・ウォングン)アルヴィンに「約束、印鑑、コピー」まさにこの3つの言葉を言いたいです。この約束ですべてのことがシャボン玉がはじけるように「ポン」と破裂して穏やかな気持ちになります。その3つの言葉ならアルヴィンにトーマスの気持ちがすべて伝わるんじゃないでしょうか。公演の度にいつもこの感情を胸に刻もうと思っています。

 (チョン・ドンファ)私はトーマスに僕の頌德文を書いてくれたありがとうという言葉を言いたいです。

 

 


もしかして自分の頌德文に書きたい言葉があるんでしょうか?

 (キム・ダヒョン)本当に一生懸命生きた。今も努力していて、これからも努力しますから。

 (チョン・ドンファ)良い夫であり、良い父親で、良い人間だった。最近は良い俳優という話を聞くのも好きなんですが、良い人間だという言葉をもっとたくさん聞きたいです。 

(ソン・ウォングン)ないです。まだ私の人生は終わってないからです。(笑)

 

 


「ストーリー」10周年を記念してこの作品に参加したちょうど一人の人間に言いたいことは?

 (キム・ダヒョン)シン・チュンス代表様は直接作品の演出まで引き受けたほど誰よりこの作品に対する愛情が大きいです。「ストーリー」で映画まで制作されるほどですから。だから代表様と作品に対して話をするほど新しく何かを見つけることができました。今回の場を借りて、代表様へ作品に対する情熱を学んだと言いたいです。

(ソン・ウォングン)チョン・ドンファに言いたい言葉が思い浮かびました。最近この友人は喉がちょっと痛いんです。それでも「ストーリー」をよくやり遂げたいのでコンディション調整のために努力しているんですよ。私も以前体調があまりよくなかった時期があったので、今ドンファの気持ちがわかっています。公演をする間私や他のトーマスたちを信じて頼ればいい作品を作ることができるから心配しないでと言ってあげたいです。

(チョン・ドンファ)それなら私もウォングン兄さんに一言伝えましょうか?

(ソン・ウォングン)それじゃあ私たちお互いにすごく仲がいいみたいじゃないですか。自画自賛じゃないのに。(一同笑)

(ソン・ウォングン)いや、そうでしょう?ハハ。最近体調が少し良くないからか、安心して頼れる人が好きなんです。ウォングン兄さんはこのチームでそういう存在です。もちろんダヒョン兄さんもそうですよ。兄さんたちの広い肩にもたれて今シーズンを終えたいという希望を伝えます。

 

 

 

 

■目を見ただけでわかる友人
イ・チャンヨン×チョン・ウォニョン×チョ・ソンユン

 

イ・チャンヨンさんは初演から、チョ・ソンユンさんは再演から、この公演に参加されていますね。チョン・ウォニョンさんも昨年に続いて二度目の参加でした。どんな魅力があるからずっとこの作品に参加するのでしょうか?

(チョ・ソンユン)魅力をぴったり明確に語ることは大変ですが、一つあげるならば「暖かさ」です。言葉で表現するのは大変なこの作品だけの暖かい情緒があるからですね。

(イ・チャンヨン)その暖かさが何なのか、私も分かる気がします。私は6回のシーズンの中で5シーズンをソンユンと一緒にしたんですが、私たち以外にもこういう風にこつこつと参加する俳優たちがいるじゃないですか。この10年間、平均2年間隔で公演が行われているので、その度に名節を迎え、家族たちが家族が一堂に会したような、安らかで慣れ親しんだ気持ちになります。新しいキャストが入ってきたら新しい家族ができた気分ですよ。今回は新しいキャストはいませんが、(キム)ダヒョン兄さんが久しぶりに参加するので、遠くに住んでいる家族が帰ってきた気分です。私に「ストーリー」はもう欠かせない家族行事になってますね。

(チョン・ウォニョン)私は去年初めて参加したんですが、先に出演した俳優とスタッフたちが作品をよく作っておいてくれたおかげでストレスなく稽古して公演ができます。ミュージカルをするとき、短い準備期間のせいで物足りなさを感じるときが多いんですが、この作品はやりながら高い完成度を確保したという点が魅力的です。その完成度を積み上げるのに、私も貢献したいです。

 

 


この作品で特に好きな場面を選ぶとしたら?

(チョ・ソンユン)私は時間が経てば経つほど「This is it」の場面に対して思い入れが大きくなります。これまで積み重ねてきた感情が解消される場面でもあるし、歌も歌詞も哲学的なんです。私のパートはあまりないですが、アルヴィンの台詞と歌を聞いていると、毎年少しずつ感じられるものが違います。

(イ・チャンヨン)アルヴィンの人生で一番良かった瞬間はハロウィンの日に学校でトーマスと初めて出会った時でしょう。ですが俳優としては「Angels in The Snow」の場面を選びたいです。トーマスがアルヴィンの真意を少しでも悟る場面だからです。この作品の始まりと終わりといえる曲なんです。

(チョン・ウォニョン)私はトーマスが「I Didn't See Alvin」を歌う場面です。トーマスが歌う間、アルヴィンは葬儀で亡くなった父親の話をしているんですが。口だけ動かし声は聞かせないのでより想像力を刺激します。果たしてアルヴィンはどんな話をしているのか、気になる場面ですね。

 

 


お話に出たついでに聞きます。葬儀でアルヴィンはお父さんについてどんな話をしたんでしょうか?

(チョン・ウォニョン)こういう話をしないと、と書き留めたものがあるんですけど、公演の度に毎回違いますね。「皆さんたちが知られている父の姿はこうでしょうが、僕が知っている姿はこうでした」というような話をしていくのですが、ある日父親とアルヴィンの間に果たしていい思い出があるんだろうかという気がしたんです。アルヴィンは母親が亡くなった後、心のままに生きたことがなく、書店の仕事も病気の父親の代わりに引き受けたものだからです。そして「僕でさえもお父さんの話をすることがこんなに難しいのに、トーマスにすごく大きな宿題を出したんだな」と思い、ふと申し訳なくなったんです。この場面でアルヴィンをどんな姿で見せるのが一番賢明なのか、悩んでいます。

(イ・チャンヨン)私も基本的なセリフは決めておいているものがあります。「僕のお父さん、知ってますよね?お父さんはこういってたじゃないですか。前にこんなことがあったことを覚えていらっしゃいますか?」こういう風な話を始めて、その続きの部分は公演ごとに少しずつ変わりますね。

 

 


一番涙をこらえるのが大変だった場面は何ですか?

(チョ・ソンユン)「I Didn't See Alvin」を歌っているときです。人物に没入して演技をするのも大変だし、私の個人的な事情を思い浮かべて演技するのも大変なんです。感情が過剰になりすぎて、作品が意図した表現と違うようにならないよう気を付けています。その場面になるといつも自分との戦いが始まりますね。

(チョン・ウォニョン)私は前回公演の時「This is it」の場面でものすごく泣きました。実はアルヴィンはそこで泣いたら駄目なんですが、単調でありながらも胸をトンッと打つメロディを聞くとすぐ心が揺れるんです。「これで全部だ」という言葉で僕たちの物語を終わらせるという事実が急に近づいてきて、泣きそうになりました。

(イ・チャンヨン)私は父親の葬儀でトーマスが頌徳文を見せてくれた時が一番つらいです。アルヴィンも前からトーマスが変わったということは感じていたんですが、それでも自分のためにこれだけはしてくれると信じていたんです。そうするうちに期待と違う頌徳文と向き合ったら、掴んでいた最後の頼りを逃した気持ちになります。なので次の場面で気持ちを引き締めて、追悼の言葉をいうことは簡単ではないです。西洋では葬儀で悲しむのではなく笑いながら故人についての思い出を分かち合う文化があるんです。アルヴィンもそうしなければならなかったんですが、自身が期待したものと違う状況に置かれたら複雑な感情が交差するんです。父親の思い出よりその失望感のために感情のコントロールが大変です。

 

 


互いが演じているアルヴィンとトーマスはどんな感じですか?

(チョン・ウォニョン)ソンユンは実際にも親しい友人なので、どうしても切なさは格別ですね。それにこの友人が場面によって雰囲気がぱっぱっと変わるんですよ。笑わせるときは笑わせ、真剣な時は真剣に、観客と意思疎通をしてもすぐに劇に集中するんです。そんなところが私とよく合うので、一緒に公演をしたらいつも新鮮で、面白いです。死そのものが与える重い感情があるのですが、そのまま哀しみだけを演じるのではなく、暖かい涙を流させてくれるのがこの作品の醍醐味じゃないですか。ソンユンと一緒ならその醍醐味を上手く生かすことができます。

(イ・チャンヨン)ウォニョンが言うように、ソンユンは笑わせることに長けている友人なので一緒に公演をしたら面白いです。その一方で正確なタイミングに笑いを収めて集中するんです。とても集中力がいい俳優です。実はウォニョンも侮れないくらい面白いので、<神と共に~あの世編~>で同じ役をやった時ずっと笑いながら稽古しました。この前二人が<ニジンスキー>を公演するのを観に行ったんですが、正直前半は笑わされたんですが。(笑)でも中盤以降、劇に集中する二人の姿を見たら、私も集中してみるようになりましたよ。

(チョ・ソンユン)私たち三人とも20代の頃からの旧友なので、そこからのシナジー(相乗効果)は確かにあります。互いを見つめる視線から違うんです。ウォニョンの魅力は言うまでもなくぴょんぴょん跳ねる才気の溌溂さですね。スーパーボールのように舞台でどこで跳ねるかわからない魅力。一方でチャンヨンには雰囲気を漂わせる内面の重みがあります。あ、二人ともとても魅力的なので、まあ優劣がつけにくいね。

 

 


公演が10周年を迎えた今、特に感謝を伝えたい人はいますか?

(イ・チャンヨン)私はワークショップメンバーだった(パク・)ウンテ*2兄さんに感謝を伝えたいです。3週間一緒に稽古したんですが、その時ウンテ兄さんが助けてくれたおかげで私がワークショップを無事に仕上げられ、本公演までやれることができたんです。2017年「12月の贈り物」というコンサートで兄さんとまた「Angels in The Snow」を歌う機会ができたんですが、また10年前に戻ったような不思議な気分でした。 

(チョン・ウォニョン)私はチャンヨンです。「ストーリー」初演をこの友人の公演で観たんですよ。チャンヨンと私は大学の同期として会って、同じ時期に除隊したんですが、当時アンサンブルとして活動していた私にはすでに有名な先輩たちと二人劇をしているチャンヨンがまるでアルヴィンの目に映ったトーマスみたいにすごく見えました。

(イ・チャンヨン)その時ウォニョンが公演を見に来て「ああよかった~」と棒を投げる場面の中途半端な物まねをしてたのをまだ覚えてますよ。この子が私をからかってるんだと思ってましたよ。(笑)

(チョン・ウォニョン)そうだったんですが、今こうして10周年公演を一緒にすることは私にはすごく気分がいい意味がある仕事です。私たちはこれからも生涯俳優でいよう!

(チョ・ソンユン)二人とも俳優を選んだので、私はスタッフの中から一人、ODカンパニーのチョ・ジョンマンプロデューサーを上げますね。この兄さんが「ストーリー」をずっと一緒にやってきたのに、前回シーズンから「ジキル&ハイド*3」のせいで忙しくて私たちを捨てたんです。(一同笑)とにかく、私が最初に合流した時期に苦楽を共にしながら精神的にたくさん頼った兄さんなのでありがとうという言葉を伝えたいですね。

 

 


後に自身の頌徳文にどんな話が書かれてほしいですか? 

(チョン・ウォニョン)彼は明るく、ポジティブで、良い影響力を持った人だった。

(イ・チャンヨン)欲張りすぎじゃない?

(チョン・ウォニョン)そうだね。まだ死んでないから死ぬ前に叶えばいいじゃん。君は?

(イ・チャンヨン)うーん、完璧に見える人を見ると「全部負けたな」と羨ましくなるじゃないですか

(チョン・ウォニョン)だから「彼は全部持っている人だった」と書いて欲しいの?

(イ・チャンヨン)それは他の人たちがみたら妬ましくなるから、「彼は誰より幸せな人だった」と書いてあったらいいな。 

(チョ・ソンユン)私は頌徳文に話したくないんですが?言ったことが種になっても怖いじゃないですか。

(チョン・ウォニョン)私がもし君の頌徳文を書くならこう書きます。「彼は死にたくなかった」

(イ・チャンヨン)「誰より長く生きたかった」

(チョ・ソンユン)私も君たちの頌徳文を本当に上手く書く自信があります。悪いけど私が君たちより長く生きるんだ。(一同笑)

 

 

(出典:The MUSICAL 2019年12月号)

*1:制作会社、ODカンパニーの代表取締役でありSOMLのプロデューサー兼演出

*2:2010年のワークショップでトーマスを演じた。本公演には出演していない。

*3:同時期に同じ制作会社で公演していた。余談ですが韓国ですごく人気のある演目です。